
HP EliteBook 850 G8は、個人でも購入可能なHPの法人向けモデルの15.6インチノートパソコン。今回のレビュー機は、その EliteBook 850 G8の中でも、最上位のCore i7にメモリーが32GBのモデル。
年末の短い間に自分の職場で使ってみて感じたのは、とてもパワフルで機能も充実したノートパソコンということ。
HP Elite Dragonfryが出てくるまではフラッグシップだったというだけあって、最上位モデルとなるとお値段もなかなかですが、当然スペックが高く機能も充実したものになっています。
基本スペックの高さとともに特徴的なのは、15.6インチノートでありながら、SIMカードスロットやプライバシースクリーン機能のHP Sure View Reflect、探しものトラッカーTile(タイル)が標準装備という、モバイル向け要素が多いこと。
モバイルノートとしては少し重いですが、会社ではなくカフェや図書館などでリモートワークを行う際に、大きめの画面で作業ができるところは、一つのメリットと言えそうです。
個人的な話をさせてもらうと、メモリーを32GBも積んでいるパソコンを触るのは初めて。サクサク作業ができるので、職場や自宅でいつも使っているパソコンに感じている不満も、まったく感じませんでした。素直に欲しいです。
スペック
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
プロセッサー | Core™ i5-1135G7 / Core i7-1165G7 ※太字はレビュー機 |
メモリ | 16GB / 32GB(最大64GB) ※太字はレビュー機 |
ストレージ | SSD (PCIe M.2) 256GB / 512GB / 1TB ※太字はレビュー機 |
ディスプレイ | 15.6 インチワイド(16:9)FHD (1920 x 1080) ・非光沢 HP Sure View Reflect(内蔵プライバシースクリーン機能)搭載 |
グラフィックス | インテル® Iris® Xe グラフィックス(プロセッサー内蔵) |
光学ドライブ | なし |
キーボード | 日本語キーボード(バックライトキーボード)テンキー付き |
無線機能 | nanoSIMスロット / IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax (Wi-Fi6) / Bluetooth 5.0 |
サイズ・質量 | 359 × 233.8 × 19.2 mm / 1.69kg |
バッテリー | 最大14.75時間 |
その他 | 指紋認証センサー、NFC搭載、忘れ物・紛失防止タグ「Tile」搭載 |
外観

天板には中央にHPのプレミアムロゴがあるのと、ヒンジとは逆側(画像では下側)に横一列の継ぎ目があるくらいで、シンプルそのもの。公式製品ページの画像には横一列の継ぎ目はありません。LTE搭載モデルはアンテナ組み込みの関係で、少しデザインが異なっているのではないかと考えていますが、確認して後日追記します。

HPのプレミアムロゴ のアップ。ロゴ部分は鏡面処理されており光が反射します。
個人的な話で恐縮ですが、このロゴ、カッコ良いいので好きです。以前このロゴの機種を探したものの当時のラインナップでは予算的に折り合わず、丸いHPロゴのPavilion13を購入しました。今では丸いロゴにも愛着が沸いて好きになりましたが、当時はとても残念だったことを覚えています。
あれからラインナップが増えたのか、今は手の届くモデルもあるので次にHPのノートパソコンを購入するなら、プレミアムロゴのモデルを狙うと思います。

背面(本でいうところの背表紙)中央にはさりげなくELITEBOOKの文字が。

底面は少し範囲広めにメッシュの吸気口が奥側にレイアウトされています。

画像を見てお分かりのように、180度とはいかないもののかなり開きます。
通常使用する上でここまで開くことはないと思いますが、天板を開くと天板奥側がボディ下に入り込み、キーボードがせり上がるため、キーボードに少し角度ががついて入力しやすくなります。また、ボディがせり上がった分だけ隙間ができます。

ちなみにディスプレイとキーボード面との境目に、排気口があります。
キーボード

天板を開くと、キーボード面にはテンキーを含むキー配列の下にタッチパッド、キーボード部分の上にはスピーカーが配置されています。
キーボード面を眺めると、2つ違和感があります。ひとつがタッチパッドの上にある2つのボタンと、キーボードの中央左寄りの丸いものがそれ。
違和感1:タッチパッドの左右ボタンが下ではなく上についてる?

普通タッチパッドの左右ボタンといえば、下に2つついていますが、Ellitebook850G8には上についているように見えます。それもしっかりタッチパッドとは別の物理的なボタンとしてついています。
でも実はこれ、普通のタッチパッドと同じように、四角い面の中の下側にも左右ボタンがあります。つまりタッチパッドの上と下に左右ボタンがついているんです。
「え?これ何の意味が?」と思ったのですが、その答えはおそらく2つ目の違和感「 キーボードの真ん中の丸いもの 」にあります。
違和感2:キーボード真ん中の丸いものはなに?

キーボードを見て最初に目に入るのが、中央左よりにある丸いポインティングスティック。これはゲーム機などの十字ボタンのようなもので、カーソルの移動に使います。
それで、一つ目の違和感「タッチパッド上の左右ボタンは何なのか?」といえば、ポインティングスティック用の左右ボタンだと思われます。人差し指でポインティングスティックを操作して、親指で左右ボタンを押すとすれば位置的にピッタリです。
タッチパッドとポインティングデバイス、2種類もついているのはちょっとムダなようにも思いますが、ポインティングスティックは、指先の力の入れ具合とその方向でカーソルを動かします。同じ種類のものでThinkPadのトラックポイントが有名ですが、手を大きく動かさなくて良く、慣れると便利です。

上部のボタンが目立ちすぎてそちらに注目してしまいますが、タッチパッド自体も普通に反応が良くタッチパッド下部の左右ボタンでの操作もスムーズでした。
尚、タッチパッドには非接触ICカードリーダー(NFC)もついています。
BANG&OLUFSENスピーカー

Bang & Olufsenとの共同開発のスピーカーを搭載。ノートパソコンなので過度な期待は避けた方がいいですが、ドラクエやFFのベンチマークソフトを実行中のサウンドは、悪くは感じませんでした。
指紋センサー

キーボード右下あたりに、指紋センサーがあります。反応がよく起動後もすぐログインでき快適でした。
電源ボタンはファンクションキーの1列としてDeleteキーの隣に配置

キーボードのファンクションキーのライン、ちょうどdeleteキーの左に電源ボタンが配置されています。 deleteキー はよく使うキーですし、押し間違えそうなので、個人的には離して配置してほしい部分です。ただ電源ボタンやnumlkキーなどいくつかのキーには、LEDが組み込まれていてON/OFFが分かりやすくなってはいます。

fn lock
Elitebook850 G8のファンクションキーは、最近のHPノートパソコンと同じく、fnキーを押しながら使用します。fnキーを押さず単体で押すと、ディスプレイの調光や音量調整、サウンドやマイクのミュート、バックライト調節など、いわゆるマルチメディアキーが働きます。
ワンタッチでこれらの操作ができるのは便利で、なかでもサウンドのミュートや、リモート会議でのマイクのミュートが、ボタン一発でできるのはとても助かります。
ですが従来のファンクションキーを多用する人の場合、fnキーを押しながらじゃないとF1からF12が効かないというのは、とても不便です。そんな時に使えるのがfn lockです。

fn lockとは、F1からF12のメインとサブの機能を入れ替える機能で、これをONにすれば、fnキーを押しながらF1からF12を押さなくても、従来のファンクションキーが使えます。
fn lock ON/OFFの操作はカンタン!fnキーを押しながらすぐ上のshiftキーを押すだけ!これでファンクションキーのメインとサブが入れ替わります。このあたり、結構不便に感じる方も多いと思うので、購入前のチェックは忘れずに!
キーボードバックライト

インターフェイス

ボディ向かって左には、奥からセキュリティスロット、USB Type-Aポート(パワーオフUSB充電対応)、ヘッドフォン/ マイクジャックがあります。もっと手前に「SD」と書かれたスマートカードリーダーがありますが、日本では使用できないようです。

ボディ向かって右には、奥から電源コネクター、USB Type-Aポート、HDMI、USB Type-C ポート x2 (Thunderbolt4)、nano SIMスロットがあります。
Thunderbolt4対応があると、対応の充電アダプターやモバイルバッテリーがあれば、Type-Cケーブルで充電ができるので、重いACアダプター持ち運ぶ必要がなくなります。
Elitebook850 G8は、15インチノートなので常時持ち運ぶことは少ないと思いますが、いざという時にアダプターなしで持ち出せるのは心強いポイントです。
SIMカードスロット(nanoサイズ)

LTE対応モデルには、nanoサイズのSIMスロットが搭載されています。ドコモやau、ソフトバンクなど携帯キャリアの4G対応SIMを契約すれば、外出先でWi-Fi環境ががなくてもインターネット通信が可能、Wi-Fiスポットを探し回る必要もありません。
個人的にノートパソコンでも15.6インチだと、モバイルではなく据え置きPCのイメージです。
ただ製品公式ページに「建設現場など、LANが敷設させていない現場に持ち込んでも使えます。」とあるように建築現場のようなところでは、一定期間だけの使用、また基本的に車移動でしょうから、画面の大きいノートパソコンにLTE対応モデルは確かに有効ですね。
またテレワークが普及でカフェなどで作業する人も増えていることを考えると、15.6インチのLTE対応ニーズもうなずけます。
ディスプレイ

ディスプレイの比率は16:9。前モデルより画面占有率が77%から86%へ11%も高くなり、狭額縁に。その分ボディもコンパクトになっています。
外出先でも安心ののぞき見防止機能「HP SureView」
HP EliteBook 850 G8には、横からののぞき見防止ができる、HP Sure Viewという名前のプライバシースクリーン機能が搭載されています。外出先のカフェなどで仕事をする際には、となりでパソコンを触っていると画面が見えたりすることも多いので、やはりまわりの目が気になります。
また情報漏洩というとウイルスに感染して情報を盗まれる、というイメージを持ちがちですが、案外人の会話や行動などから情報を盗まれる部分が軽視されがちです。
特にテレワークが増えたことにより、カフェやレンタルスペースなど職場以外の場所でパソコンを使用していると、画面ののぞき見、いわゆるショルダーハックの危険性も高まることを考えると、Sure Viewのような機能がかなり有効なのではないでしょうか。
以下では、通常使用時とSure View使用時に見る角度を変えてどう見えるかを撮影したものです。
通常モード

SureViewモード

Sure View搭載の影響で、OFF時でも角度によっては少し暗く感じる部分はありますが、普通に使用する分には気になるほどではありませんでした。まぁこの辺りの感じ方は個人差があると思いますが、ビジネスで使用するにあたり、情報流出を防ぐことを重視するなら必須の機能ではないでしょうか。

ちなみに Sure View モードに切り替えるには、fnキーロックをしていない状態でF2キーを押すだけ。カンタンなので急いで切り替えたいときにもすぐ対応できますね。
プライバシーシャッター付きのWebカメラ「HP Sure shutter」

プライバシー関連の機能としてはもう一つ、Webカメラにプライバシーシャッターが搭載されています。やはり物理的にカメラをふさいでくれると安心感があります。
忘れもの防止トラッカーTile搭載

Tileは、探し物トラッカーというジャンルのアイテム。Tileを取り付けたモノを見失ったときに、あらかじめ登録しておいたスマホを使って近くにあるか探せたり、最後の接続を記憶した場所を確認できます。
HP EliteBook 850 G8にはこれが内臓されており、万が一の紛失や盗難の際に活用できます。
重量が約1.7kgと15.6インチノートとしては比較的軽量

重量は本体のみで1.734kg、アダプター単体で231.2kg、合計1.966kg。
アダプターと合わせるとそれなりの重さになりますが、それでも2kg足らず。本体のみでも1.73kgと、重いモバイルノート並み。最近の15.6インチノートは軽くなりましたね。
ベンチマーク
CrystalDiskMark7

CrystalDiskMark 7でSSD性能をチェック。
ベンチマークテスト時の電源プラン

ここから各種ベンチマーク結果を掲載(電源プランはメーカー標準の「HP Optimized(Modem Standby)」)。電源アダプターを接続して計測しています。
PCMARK10

ACアダプターに接続した場合
総合スコア:4,927
Essentials:9,310
Productivity:6,880
Degital Content Creation:5,068
バッテリーのみの場合
総合スコア:4,570
Essentials:9,046
Productivity:6,660
Degital Content Creation:4,301
CINEBENCH R23

グラフィックス性能をCINEBENCHで確認。
CPU(Multi Core):4448 pts
CPU(Multi Core):1443 pts
MP Ratio:3.08 x
ドラゴンクエストXベンチマーク

設定は、最高品質・1980×1080・フルスクリーンで、電源アダプターを接続してテスト。評価:すごく快適 / スコア:13636
ファイナルファンタジーXIVベンチマーク

FF XIV(暁月の終焉)ベンチ の設定は、 1980×1080 、高品質(デスクトップPC)でテストし、スコア:4012・評価:普通
HP Programmable keyでいつもの作業をちょっとラクに

HP EliteBook 850 G8には、HP Programmable keyというアプリケーションと、F12キーに割り当てられているProgrammable keyというキーがあります。
キーには、上の画像のように、ひし形が3つ重なったようなマークがついています。
このProgrammable key、もしくはProgrammable keyとCtrlやShift、Altキーと組み合わせた4種類のショートカットキーの動作をカスタマイズできる機能です。

キーには5個のアクションを設定することができるので、ある業務を行うときに使用するアプリケーションやファイルなどを登録しておくと、ワンアクションで一括起動できたりします。
もちろんRPAで有名なPowerAutomateのような複雑なアクションをくみ上げることはできませんが、起動を一括で行うだけなら、PowerAutomateで必要なプログラミング的な知識は不要。
いつも繰り返し行うような作業なら、カンタンな準備だけでも省力化できるので、とてもおすすめです。
Programmable key の対象のキーを増やせるとより便利になりそう

ここで超個人的な意見を少し・・
キーをカンタンにカスタマイズできる Programmable key が便利なので、個人的にはもう少し対象のキーを増やせるといいのではと考えています。たぶんそういう風に作っていないので、無理なんでしょうけど。
例えばポインティングスティックは便利ですが、人によっては全く使わない人も多いのではないかと思います。そのような場合、タッチパッド上の2つのボタンが意味がなくなります。ならこれをカスタマイズできるようにすると、便利なのでは?と思うのです。
せっかく簡単に便利なボタンを増やせる機能があるのなら、もう少し広げてみてもいいと思うのですが、レビューには関係なかったですね、スミマセン。
まぁそれはともかく、 Programmable key はとても便利な機能です。この機種だけではなく、今後レビュー予定の、HP Elite Dragonfry G2にもついています。おそらく最近のHP法人ノートにはついているんじゃないでしょうか。
設定は簡単なので、もし購入したらぜひ活用して業務をほんの少し楽にしてください!
外出先でも使えるモバイル要素充実の高スペック15.6インチノートパソコン

今回はHP EliteBook 850 G8をレビューしました。
レビュー機は、EliteBook 850 G8の中でも、最上位のCore i7&32GB メモリーモデル。年末の短い期間に自分の職場で使ってみると、普段利用しているパソコンで感じるストレスを全く感じない、とてもパワフルなノートパソコンでした。
私は動画編集はしませんが、インターネットを調べものをする時にたくさんタブを開いたり、Photoshopのような画像編集ソフトで一気に何枚もの画像を開いて編集したりという使い方が比較的多いです。この2つの作業は、案外パワーを使います。
さらにブラウザは時により2・3種類、エクセルやその他のアプリも同時に開きっぱなしにしたりもします。
こんな使い方をしていると、職場や自宅のパソコンだと、ときどき不安定になったり、ひどい時には落ちたりしますが、今回のレビュー機では全くそういうこともなく、サクサク作業がこなせました。
1番下のモデルでもCore i5-1135G7&16GBメモリー。一番下とはいえ、第11世代のCore i5でメモリーも16GBですから、同じ使い方をしてもおそらく問題なかったと思います。ましてや普通の事務作業やインターネットの閲覧&メールの処理のような作業なら、快適に作業ができるでしょう。
またEliteBook 850 G8は外出時に有効なモバイル要素が充実しています。
高速で安定した通信、さらに省エネのWi-Fi 6対応。さらにSIMスロット搭載で4G LTE対応なので、格安SIMなどを使えば、社外などWi-Fiがない環境でも通信が可能。
またHP Sure View Reflectで、カフェなど外出先でののぞき見対策ができ、バッテリ駆動時間は14.75時間とカタログ値では長め。
もちろん実際の使い方により、かなり短くなるのであくまで参考値ですが、仮にバッテリーが切れたとしても、この機種はThunderbolt4対応Type-C端子搭載。つまりType-C充電ができるので、重いアダプターを持ち歩かなくても、充電が可能です。
このように15.6インチのノートパソコンでありながら、モバイル要素が充実しているところは、テレワークが普及したこの時代にマッチした機種だといえそうです。
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